2018.1.26

京大入2017年入試問題について回答不能ではないかとの意見があります。 これについての私の意見は2018年1月21日にphilewebというオーディオ関係のサイトに投稿しました。

京大2017物理 出題ミス?

私としてはすぐに意見は収束すると考えていましたが、1月25日になってもグダグダと議論が続いているようです。

どうして日本の音響工学の先生方はこの件に関して意見を述べないのだろうか? 単なるオーディオマニアの私が何を書いても説得力がないのできちんとした先生の登場が待たれますが、とりあえず書いてみます。

音というのは疎密波なので、とくに断りのない場合には変位は考えません。 また入試問題として相応しいかどうかは考えません。 単純に答えが出るかどうかだけ考えます。 私は音響工学を学んだことはないただのオーディオマニアですので間違っている可能性は当然有ります。

1. 音源の構造

これについては不明とする意見もありますが問題文を読むと (3)で「車Sから発せられた音波は全方位に伝わる」と書いてあります。 これによって音源は全方位に同位相で音を発していることが自明です。 方向によって逆位相になるのであれば音波の伝わらない方向が出来てしまいます。 例えばスピーカーユニットを箱に入れないで音を再生した場合には前と後ろに逆位相の音を出します。 その境目の方向には音が出ません。つまり8の字型の指向性になります。 スピーカーユニットを箱にいれて後ろの逆相の音が出ないようにすると回折により音が回りこみ全方向に同位相の音が出ることになります。 理想的な点音源とは全方位に同位相で同じ強さの音を出します。この問題の場合にはこの理想の点音源を考えれば良いのです。

2. 音波が強め合うとは「変位波」としてか「密度波」としてか

音は疎密波です。音波が強め合うとは音圧が高くなる、密度波として強め合う以外に解釈出来ません。この辺は音響工学の先生の解説が欲しいところです。 実際に部屋の中にスピーカーを置いて音を再生すると壁面の反射による定在波で低音のレベルが下がる場所が出来ます。その場所を「変位波としては強め合っているので音波は強くなっている!」と主張しても失笑を買うだけです。

3.反射波の壁での反射点(あるいは仮装音源を導入した場合の仮装音源)、音源、運転手の位置関係

こんなものは何の関係もありません。疎密波として考えれば音源と反射による音の時間差さえわかれば良いのです。 時間差(とレベル差)を持った波を足し算すれば良いだけです。「音源と反射波の方向が同じだろうと逆だろうと90度だろうと同じ」です。

実際に部屋の中でスピーカーのインパルスレスポンスを測定すると時間差とレベル差を持った反射波が幾つも観測されます。床からの1次反射は斜め前方下から、壁からの1次反射は横前方から、天井は、後ろの壁は….と様々な方向からの反射波が観測されます。 それらをいちいち変位の方向を考えて足し算する、なんてことはしません。疎密波として考えれば方向関係なしに時間差で足し算すれば良いのですから。

音の反射は身近にみられる物理現象です

簡単に観測されるものを捻じ曲げて考えるのは止めましょう

音を変位で計算するのは止めましょう

音響工学の先生方はぜひ発言をお願いします

2018年1月28日追記

680Hz.wav

このファイルを再生して定在波の実験ができるかな? そのうちやり方を説明します。

2018年2月3日追記

2月1日に京大が出題ミスを発表しました。

解説は平成29年度京都大学一般入試における物理問題 III (4)の解説 で読めます。

オーディオマニアとして納得の出来る説明になっています。

問題点は最後の一文に集約されています。


本問題においては、「運転手が音を聞く」という観測動作が記述されている。耳が変位を検知 していると仮定すると、固定端である壁に近づくと、音は聞こえなくなるはずである。経験上 そういった現象は観測されないので、変位を観測しているとは考えにくい。しかし、耳が圧力 を検知していることを前提知識としないのであれば、問題文の「音波は強め合ったり弱めあっ たり」の意味を明らかにするために、音波の検知方法を明記する必要があった。


「耳が圧力を検知していることを前提知識」として持っている者にとっては普通に解ける問題なのですが、高校物理ではそこを教えていないので「音波の検知方法を明記する必要があった」という出題ミスということになったようです。

2018年1月26日